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【2026年改正対応】行政書士が成年後見業務を選ぶべき理由と実務の始め方

高齢女性と笑顔で対面し、優しく手を握りながら成年後見の相談に乗る若手行政書士のイラスト

行政書士として登録を済ませ、数ある取扱業務の中で「成年後見業務」が気になっているあなたに向けて、現場の最前線からリアルな実態をお話しします。

建設業許可や入管業務のように、定型的な書類を作成して役所に提出すれば終わる業務ではありません。一人の人間の人生、財産、そして日々の暮らしに深く入り込み、本人が最期を迎えるその日まで寄り添い続ける。それが成年後見という仕事です。

この記事では、単なる制度の解説や「社会貢献になる」といった綺麗事ではなく、泥臭い実務の現場、報酬の現実、精神的な負担、そして具体的な始め方まで、現場のリアルな側面を包み隠さずお伝えします。

 

 

成年後見業務とは?行政書士が担う役割の全体像

成年後見制度について、試験勉強で民法を学んだあなたなら基本的な枠組みは理解しているはずです。しかし、試験知識と実務は全くの別物です。まずは実務の観点から、行政書士が成年後見の現場でどのような役割を果たしているのかを整理します。

法定後見と任意後見の違い(実務的視点から)

成年後見制度には、大きく分けて「法定後見」と「任意後見」があります。

法定後見は、すでに判断能力が低下してしまった方のために、家庭裁判所が後見人等(後見・保佐・補助)を選任する制度です。実務において、私たちが受任する案件の多くはこの法定後見になります。地域包括支援センターや社会福祉協議会、あるいは親族からの申し立てによりスタートします。

一方、任意後見は、本人が元気なうちに将来の代理人(任意後見受任者)を自ら選び、公正証書で契約を結んでおく制度です。行政書士の業務として非常に魅力的であり、親和性が高いのは実はこちらの任意後見契約のプランニングや締結サポートです。
遺言書の作成支援や家族信託の設計とセットで提案することが多く、「将来の安心を設計する」というコンサルティング的な要素が強くなります。ただし、任意後見契約を結んでも、実際に本人の判断能力が低下し、家庭裁判所に「任意後見監督人」の選任を申し立てるまでは、後見人としての業務はスタートしません。つまり、契約から発効まで何年も(場合によっては十数年も)タイムラグがあるのが特徴です。

実務においては、この「今すぐ支援が必要な法定後見」と「将来の備えとしての任意後見」の両輪を回していくことが、行政書士としての専門性を高めるポイントになります。

なぜ今、行政書士に成年後見が求められているのか

厚生労働省や最高裁判所の統計資料(成年後見関係事件の概況など)を見ると、成年後見制度の利用者数は年々増加しています。しかし、対象となる認知症高齢者の数に対して、実際に制度を利用しているのはほんの数パーセントに過ぎません。

かつては親族が後見人になるケースが圧倒的多数でしたが、親族による財産の横領や、親族間のトラブル(誰が面倒を見るか、財産をどう管理するかで揉める)が増加した結果、現在では約8割の案件で親族以外の第三者(専門職など)が後見人に選任されています。

ここで弁護士や司法書士、社会福祉士といった他の専門職と並んで、私たち行政書士に大きな期待が寄せられています。なぜなら、行政書士は「街の法律家」として地域住民にとって最も敷居が低く、各種行政手続き(介護保険、障害福祉、生活保護など)に精通しているからです。後見業務の日常は、実はこの「役所への申請・届出」の連続なのです。

 

【2026年最新動向】民法改正による成年後見制度の大幅見直しと実務への影響

これから成年後見業務に参入するあなたにとって、絶対に知っておくべき重大なニュースがあります。2026年4月に、成年後見制度を抜本的に見直す民法改正案が閣議決定されました(順調にいけば2028年度中にも新制度が運用開始される見込みです)。

約25年ぶりとなるこの大改正により、これまでの制度が抱えていた構造的な課題が解消される一方で、私たち実務家にはより柔軟で高度な提案力が求められるようになります。現場の視点から見た主な改正のポイントは以下の2つです。

「終わらない後見(終身制)」の廃止

現行制度最大のデメリットとして家族から敬遠されていたのが、「一度始めたら、本人が亡くなるまで原則としてやめられない」という点でした。たとえば、施設入所の費用を捻出するために実家を売却したいという一時的な目的で利用を始めても、目的達成後に制度を終わらせることはできませんでした。

今回の改正案では、目的の手続きが完了し、家庭裁判所が「保護の必要性がなくなった」と判断すれば、制度の利用を途中で終了できる仕組みが盛り込まれました。これにより、「一時的なサポートが必要」というケースでも制度が使いやすくなり、これまで利用をためらっていた潜在的なニーズが一気に掘り起こされると予想されます。

3類型を「補助」へ一元化し、オーダーメイド型の支援へ

現行の「後見・保佐・補助」という3つの類型が整理され、「補助」を基本とする仕組みに再編されます。従来の「後見」では後見人に包括的な財産管理の権限が与えられていましたが、本人の自己決定権が過度に制限されてしまうという批判がありました。

改正後は、本人の状況や希望に合わせて、必要な手続きにだけ限定して個別に代理権などを付与する仕組み(限定後見・オーダーメイド型支援)へと転換します。また、本人のニーズに合わなくなった場合の支援者の交代や解任も、これまでより柔軟に行えるようになります。

この変化は、行政書士にとって非常にポジティブな追い風です。なぜなら、「本人の意思を最大限引き出し、どの範囲の支援が必要かを個別にプランニングする」というプロセスは、まさに私たちが遺言作成や家族信託の設計で培ってきたコンサルティング能力そのものだからです。新しい制度のもとでは、単なる画一的な財産管理人ではなく、本人の人生を個別にデザインする伴走者としての手腕が、今まで以上に問われることになります。

 

現場から見た成年後見業務の「リアルなメリットとデメリット」

ここからは、現場の視点から、この業務のリアルな側面をお伝えします。これから業務を選ぶ上で、最も気になる部分だと思います。

想像以上に深い「人との関わり」がもたらすやりがい

成年後見業務の最大の魅力は、圧倒的な「人間臭さ」にあります。

許認可業務では、企業の社長や担当者とドライにビジネスを進めることが多いですが、後見業務ではご本人(被後見人)はもちろん、ご家族、ケアマネジャー、施設長、病院のケースワーカーなど、多様な人々と密接に関わります。

現場で担当するケースの一例をお話しします。身寄りがなく、自宅でゴミに埋もれるように生活していたところを保護され、後見人に選任されるような事案です。
当初は全く心を開いてくれず、面会に行っても怒鳴られる日々が続くこともあります。しかし、毎月施設に足を運び、好物の和菓子を差し入れ、昔話に耳を傾け続けるうちに、少しずつ笑顔を見せてくれるようになります。
ある日、ご本人がぽつりと「先生が来てくれるのが、今の唯一の楽しみだよ」と言ってくれた時、行政書士になって本当に良かったと心の底から思える瞬間が訪れます。

書類を右から左へ流すだけの仕事では決して得られない、一人の人間の尊厳を守り、人生の伴走者となるやりがい。これが、成年後見業務の最大の魅力です。最高裁判所が提唱する「意思決定支援(本人の希望を最大限尊重し、引き出す支援)」の最前線に立つことができるのです。

報酬の現実(儲かるのか?という疑問に対する率直な答え)

きれいごと抜きにお金の話をしましょう。成年後見業務は儲かるのでしょうか。

結論から言うと、「短期的には全く儲からない。しかし、長期的には強固な経営基盤の一部になる」というのが現場の実感です。

法定後見人の報酬は、私たちが勝手に請求することはできず、家庭裁判所が決定します。家庭裁判所が公表している目安によると、管理する財産額が1000万円以下なら月額2万円程度です。1000万円を超え5000万円以下なら月額3万円〜4万円、5000万円を超える場合は月額5万円〜6万円といった基準がありますが、これはあくまで「年に1回、まとめて支払われる」ものです。

つまり、月額2万円の案件であれば、1年間必死に財産管理と身上保護を行い、家裁に定期報告書を提出して、ようやく24万円の報酬付与審判が下ります。しかも、本人の財産が枯渇している(生活保護受給者など)場合は、自治体の「成年後見制度利用支援事業」による報酬助成を受けられない限り、事実上の無報酬(ボランティア)になるケースも存在します。

時給換算すると、特に就任直後の数ヶ月間は、財産調査や各種手続きに奔走するため、最低賃金を大きく下回るでしょう。しかし、数年が経過し、本人の生活環境が安定してくると、日常的な業務は口座の入出金管理と定期的な面会程度に落ち着きます。この状態の案件を複数抱えるようになると、毎年一定の時期に、まとまった報酬が安定して入ってくるようになります。これが、経営のストックビジネス的な側面を持つと言われる所以です。

ただし、報酬を目当てにする業務ではありません。報酬以上の労力と精神力が求められる仕事であることを覚悟してください。

精神的な負担と責任の重さ(クレームや親族間トラブルのリアル)

デメリット、というよりも「覚悟すべきこと」として、精神的な負担の重さが挙げられます。

まず、親族間での対立が激しい案件に選任されると、一方の親族から「あいつに財産を渡すな」「毎月の収支を1円単位で私に報告しろ」といった激しいクレームや要求を受けることがあります。私たちはあくまで「本人のため」に財産を管理しているのであり、親族の要望をすべて叶えるわけにはいきません。この板挟みになり、理不尽な怒りをぶつけられることは日常茶飯事です。

また、ご本人が夜中に徘徊して警察に保護されたり、施設で転倒して救急搬送されたりした場合、後見人の携帯電話が鳴ります。土日も深夜も関係ありません。常に「何かあるかもしれない」という緊張感を抱えて生きていくことになります。

さらに、他人の財産を預かるというプレッシャーは想像以上です。1円の計算ミスも許されません。「横領を疑われないか」という恐怖感から、どんなに少額のレシートでも、必ずスキャンして二重三重のバックアップを取るような徹底した管理が求められます。

 

行政書士が成年後見人になるための具体的なステップ

では、実際にどうすれば成年後見業務を受任できるようになるのでしょうか。試験に受かったからといって、明日から家裁が案件を振ってくれるわけではありません。

コスモス成年後見サポートセンターへの入会は必須か?

行政書士が成年後見業務を行う上で、よく話題に上がるのが「一般社団法人コスモス成年後見サポートセンター」への入会です。

大前提として、他人の人生や財産に深く関わる成年後見業務は、その一つひとつが個別の事情を抱えた「困難事例」の側面を持っています。そして実務を続けていれば、単なる財産管理の難しさだけでなく、被後見人のこれまでの生活背景や複雑な家族構成、さらには親族間の激しい対立などが幾重にも絡み合い、個人の力だけでは抱えきれないほどの事案に直面することが必ずあります。このような時にコスモスに加入していると、組織からの手厚いサポートや、経験豊富な会員から多様なアドバイスを受けることができるという大きなメリットがあります。

また、体系的な専門研修を受けられるだけでなく、同じ業務を扱う行政書士が集まる場所でもあるため、日々の実務で生じる疑問や悩みを先輩行政書士へ相談できる環境を作ることができます。孤独になりがちな実務において、このセーフティネットの存在は非常に大きく、そういった意味で「事実上必須」と言えるでしょう。

一方で、必ずしもコスモスからの法定後見ルートだけに縛られる必要はありません。独自の営業ルートを開拓し、裕福な方などをターゲットに「任意後見契約」の設計や締結サポートから、実際の財産管理、死後事務委任までをパッケージ化して、一つの事業として大きく展開している行政書士もたくさんいます。自分の目指す事務所の形に合わせて、どのように関わっていくかを検討することが重要です。

基礎研修と名簿登載までの道のり

コスモスに入会したからといって、すぐに後見人になれるわけではありません。まずは厳しい「基礎研修」を修了する必要があります。

この研修は非常に充実しており、座学だけでなく、実際の書類(財産目録や収支予定表など)を作成する演習がみっちり組み込まれています。民法や家事事件手続法の知識はもちろん、高齢者の心理、認知症の医学的知識、社会福祉制度など、幅広い知識が問われます。

研修の最後には効果測定(考査)があり、これに合格して初めて「名簿登載」の資格を得られます。考査は決して甘くなく、しっかりと復習して臨まないと落ちます。試験勉強の時と同じくらいの緊張感を持って取り組んでください。

無事に名簿登載されると、あなたの名前が管轄の家庭裁判所に提出される専門職候補者名簿に載ることになります。

最初の案件を獲得する方法

名簿に載った後、どのように最初の案件(第一号案件)を獲得するのでしょうか。

1. 家庭裁判所からの打診を待つ
名簿順や、その時の家裁の案件状況、あなたの所在地などを考慮して、家庭裁判所の書記官から突然電話がかかってきます。「〇〇市の△△さんの件ですが、後見人をお引き受けいただけないでしょうか?」という具合です。この最初の電話を取った時の震えるような緊張感は、実務家なら誰もが経験するものです。最初の案件は、複雑な親族トラブルがない、比較的財産関係がシンプルなケースが回ってくることが多いです。

2. 地域包括支援センターやケアマネジャーへの地道な営業
待っているだけでは案件は増えません。自ら地域の福祉ネットワークに飛び込んでいく必要があります。地域の社会福祉協議会が主催する勉強会に参加したり、地域包括支援センターに挨拶に行き、「成年後見の相談に乗れます」とアピールします。
最初は相手にされませんが、一度、複雑な生活保護の申請や、困難な親族との交渉を無償で手伝ってあげたりすると、「この行政書士の先生は動いてくれる」と信頼され、そこから「実は後見人をつけたい人がいて…」と相談が舞い込むようになります。

 

成年後見実務の具体的な流れ(選任から日常業務まで)

家庭裁判所から選任され、審判書が手元に届いてから、どのような実務が待っているのか。時系列で詳しく解説します。

就任直後の初回報告(財産目録の作成は時間との戦い)

選任から約1ヶ月以内に、家裁に対して「初回報告」を行わなければなりません。これが非常にハードです。

まず、審判書と確定証明書、そして法務局で取得した「登記事項証明書」を握りしめて、本人の口座があるすべての金融機関を回ります。銀行の窓口で「後見人からの届出」を行うのですが、これが信じられないほど時間がかかります。銀行ごとに必要な書類が異なり、窓口の担当者も後見制度に不慣れな場合が多いため、1つの銀行で2時間待たされることもザラです。

同時に、本人の自宅を捜索し(親族立ち会いのもと行うことが多いです)、通帳、印鑑、年金手帳、保険証券、権利証、タンス預金などを探し出します。ゴミ屋敷のような状態から、大切な書類を発掘する作業は肉体的にも精神的にも堪えます。

見つけ出した通帳の履歴を過去数年分チェックし、使途不明金がないかを確認します。不動産があれば名寄帳を取得し、現地を確認します。これらの調査結果をまとめ、1円単位で正確な「財産目録」と「年間収支予定表」を作成し、家裁に提出します。この最初の1ヶ月の密度は、他のどんな業務よりも濃いと感じるはずです。

日常的な財産管理と身上保護(境界線の見極め)

初回報告が終わると、日常業務に入ります。

財産管理は、本人の年金収入を管理し、施設利用料、医療費、税金、公共料金などを滞りなく支払うことです。専用の出納帳(エクセルソフトなど)を作成し、すべての領収書をナンバリングして保管します。

身上保護(身上監護)は、本人の生活環境を整えるための法律行為です。例えば、老人ホームの入所契約、要介護認定の更新申請、入院時の手続きなどです。
ここで絶対に勘違いしてはいけないのが、後見人は「事実行為」を行う義務はないということです。事実行為とは、本人のオムツを替えたり、病院への送迎を自分の車で行ったり、日用品の買い出しをしたりすることです。
もちろん、人間関係を構築するために、面会のついでにちょっとした差し入れを買っていくことはあります。しかし、日常的な介護や送迎まで引き受けてしまうと、後見人としての業務が回らなくなりますし、万が一事故が起きた際の責任問題になります。
「法律行為(契約など)」は後見人が行い、「事実行為」は介護サービス事業者やヘルパーに依頼して契約を結ぶ。この境界線を明確に引くことが、自分自身を守り、ひいては本人を守ることに繋がります。

年に一度の定期報告(家庭裁判所とのやり取りのコツ)

就任から1年後(その後は年に1回)、家庭裁判所に対して「定期報告」を行います。これまでの1年間の収支状況、財産の増減、本人の生活状況の推移などを報告書にまとめ、すべての通帳のコピーと領収書の束を提出します。

ここで重要なのは、「日頃から記録を溜め込まないこと」です。1年分のレシートを報告月の直前にまとめようとすると、必ず計算が合わなくなり地獄を見ます。月に1回は必ず出納帳と通帳の残高を突き合わせ、完璧な状態にしておく習慣が不可欠です。

また、家裁の書記官は非常に忙しいため、報告書は「誰が見ても一目で状況がわかるように、付箋を貼り、インデックスをつける」といった気配りが喜ばれます。こうした丁寧な仕事ぶりが、「この行政書士は信頼できる」という評価に繋がり、次の案件紹介へと結びついていくのです。

 

他士業(弁護士・司法書士・社会福祉士)との違いと行政書士の強み

成年後見人は、弁護士や司法書士、社会福祉士も多く担っています。彼らの中で、私たち行政書士はどのような立ち位置を築けば良いのでしょうか。

許認可業務・遺言相続業務との圧倒的な親和性

行政書士の最大の強みは、「街の法律家」としての総合力にあります。

例えば、本人が自営業を営んでいて、その事業を廃止するための各種行政庁への届出(廃業届、許認可の返納など)が必要になった場合、行政書士であればワンストップで対応できます。

また、本人が農地を所有しており、それを売却して施設入所費用に充てたい場合、農地法の許可(3条や5条)が必要になります。これもまさに我々の独壇場です。

さらに、任意後見契約のプランニング段階から関わっている場合、本人の意思を反映した遺言書の作成(公正証書遺言の起案)や、家族信託の設計などをトータルでサポートできます。他士業が「裁判」や「登記」という特定分野のスペシャリストであるのに対し、行政書士は「生活と行政を繋ぐゼネラリスト」としての強みを発揮できるのです。

フットワークの軽さと「福祉的な視点」の融合

社会福祉士は「身上保護のプロ」ですが、財産管理や法的な契約実務に不安を抱える方がいます。一方、弁護士は法的なトラブル解決には最強ですが、報酬額が高くなりがちで、日常的な細かい面会には時間を割きにくいという現実があります。

行政書士は、その中間を埋める存在として最適です。法律の専門家としての正確な財産管理能力を持ちながら、地域に根ざしたフットワークの軽さで頻繁に本人と面会し、ケアマネジャー等と密に連携する。法務と福祉のバランス感覚こそが、これからの行政書士に求められる後見人像だと言えます。

 

成年後見業務を始める前に知っておくべきリスク管理

光の部分だけでなく、影の部分、つまり重大なリスクについても触れておかなければなりません。これを理解せずに業務に手を出すのは非常に危険です。

横領を疑われないための徹底した記録管理

先ほども少し触れましたが、「他人の金銭を預かる」ことのリスクは絶大です。
悪意がなくても、自分の事務所の経費の財布と、被後見人の財布が少しでも混同してしまったら、一発で業務上横領を疑われます(場合によっては懲戒処分や刑事罰の対象になります)。

そのため、現金の取り扱いは極力避け、すべて銀行振り込み等の履歴が残る形で行うのが鉄則です。
施設での日用品購入のために、やむを得ず現金を施設に預ける場合(小口現金)も、必ず「預り証」を交わし、定期的に施設の出納記録と残高をチェックしなければなりません。自分の身の潔白を、第三者に客観的な証拠で証明できるようにしておくこと。これが最も重要なリスク管理です。

死後事務委任契約との組み合わせにおける注意点

成年後見人の業務は、原則として「本人の死亡」によって終了します。

しかし現実には、身寄りのない方が亡くなった場合、誰が葬儀を出し、誰が病院の未払金を精算し、誰がお墓に納骨するのでしょうか。後見人は、本人が亡くなった瞬間に「死後の事務」を行う権限を失うため、法的な空白状態が生まれます。

これを防ぐために、任意後見契約を結ぶ際に、同時に「死後事務委任契約」を締結しておくことが実務上非常に重要になります。しかし、この死後事務はトラブルの温床にもなります。葬儀の規模、埋葬の方法などについて、疎遠だった親族が突然現れてクレームをつけてくることがあるからです。

死後事務を受任する場合は、本人が元気なうちに、「どのような葬儀にしたいか」「誰に連絡してほしいか」を詳細にヒアリングし、契約書に明記しておくことが、後々のトラブルを防ぐ唯一の防波堤になります。

 

これから成年後見業務を検討するあなたへ伝えたいこと

ここまで、成年後見業務の光と影、そして具体的な実務のリアルについてお話ししてきました。決して楽な仕事ではなく、効率よく稼げるビジネスモデルでもありません。

それでも、多くの行政書士がこの業務を続けているのは、やはり「人の役に立っている」というダイレクトな手応えがあるからです。

認知症によって自分を見失いそうになっている方の、これまでの人生の軌跡を尊重し、最期までその人らしく生きられるように法的な側面から護り抜く。その重圧と引き換えに得られる「ありがとう」の言葉は、他のどの業務にも代えがたい価値を持っています。

もしあなたが、ただ書類を作成するだけの代書屋ではなく、人の人生に深く関わり、地域社会に不可欠なインフラとして活動したいと願うのであれば、成年後見業務は間違いなくやりがいのある仕事になるはずです。まずはコスモス成年後見サポートセンターの門を叩き、厳しい研修に挑戦してみてください。

 

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