行政書士として独立開業を考えられている皆さん、夢の実現に向けて様々な準備を進めていることと思います。事務所の場所、専門分野、ホームページ作成など、考えるべきことは山積みですが、意外と頭を悩ませるのが「備品」、特に「プリンター」ではないでしょうか。
行政書士の業務は「書類作成」が中心であり、パソコンで作成したデータを「紙」として出力する機会が非常に多いのが現実です。電子申請も普及しつつありますが、まだまだ紙での申請が求められる場面は多く、またお客様との打合せ資料など、業務遂行にプリンターは欠かせません。
しかし、開業当初は何かとお金がかかります。「高性能なものが必要?」「リースと購入、どっちがお得?」「どんな機能があれば十分?」――このような疑問や不安をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。特に、限られた資金の中で、いかに効率的かつ無駄なく必要な環境を整えるかは、開業成功の鍵となります。
この記事では、まさにこれから行政書士として第一歩を踏み出すあなたに向けて、プリンター選びで「失敗しない」ための具体的なアドバイスをお届けします。リース契約の落とし穴から、賢い購入方法、さらにはコンビニ印刷の活用法まで、開業行政書士が直面するプリンター問題を徹底的に解説します。この記事を読めば、あなたの状況に合わせた最適なプリンター戦略が見えてくるはずです。ぜひ最後までお読みください。
プリンターはなぜ行政書士に必須なのか?
行政書士の業務の根幹は、依頼者の代わりに官公署に提出する書類を作成し、申請手続きを行うことです。デジタル化が進んだ現代においても、多くの申請手続きでは依然として「紙の書類」が必要とされます。
パソコン上で完璧な書類を作成しても、それを物理的な形にして提出しなければ、手続きは始まりません。そのため、パソコンが行政書士の「書斎」であるとするならば、プリンターは作成した書類を「世に出すため」の、いわば「出口」の役割を担う必須ツールと言えます。
申請書類の印刷はもちろんのこと、お客様への説明資料、契約書、請求書など、日常業務の様々な場面で印刷のニーズが発生します。電子申請だけで完結できる業務は限定的であり、現状ではプリンターなしで行政書士業務を円滑に進めることは、極めて困難と言わざるを得ません。だからこそ、開業準備リストの上位にプリンターが位置づけられるのです。
開業期のプリンター選びで最も重要なこと:固定費を避ける
開業準備を進める上で、最も慎重になるべきは「コスト」、特に毎月必ず発生する「固定費」です。行政書士に限らず、新しい事業を立ち上げる個人事業主にとって、開業初期の固定費は経営を圧迫する最大の要因となり得ます。
開業期の最大の敵=固定費
中小企業庁の調査などによると、個人事業主が開業後1年以内に廃業する確率は約30%と言われています。廃業の主な理由は多岐にわたりますが、最も多いのは「商品やサービスが売れないこと」による資金繰りの悪化です。つまり、事業が軌道に乗る前に資金が尽きてしまうケースが多いのです。
新しく事業を始めてすぐに安定した収入を得るのは、多くの場合、至難の業です。特に、未経験から開業する場合や、既存の人脈に頼れない場合は、最初の顧客獲得に時間がかかることを覚悟する必要があります。
こうした厳しい現実を踏まえると、開業初期に最も重要な経営戦略は「規模は小さく、固定費を可能な限り抑える」ことです。高額な家賃の事務所を借りたり、最初から多くの備品をリース契約したりといった「大きく始める」選択は、資金をあっという間に枯渇させるリスクを高めます。
リース契約の落とし穴
プリンターを検討する際に、「リース契約」という選択肢を勧められることがあります。初期費用がかからない点を強調されることもありますが、開業期の行政書士にとっては、このリース契約こそが避けるべき「固定費」の典型例となります。
リース契約を結ぶということは、文字通り毎月一定額の支払いが発生し続けるということです。開業直後からコンスタントに依頼があり、安定した収入が見込める状況であれば問題ないかもしれませんが、現実的にはそう甘くありません。開業初期は依頼が散発的であり、プリンターの使用頻度も想定より低いことが多いです。
しかも、前述のように電子申請の普及が進めば、将来的にはさらにプリンターの出番が少なくなる可能性もあります。にもかかわらず、リース契約期間中は使用頻度に関わらず、決められた月額料金を支払い続けなければなりません。これは、まさに開業期の経営にとって大きな負担となります。
「開業直後にリースのほうが割安となるような頻度でプリンターを使用することはありません。」これは、未経験、人脈無しで開業する多くの新人行政書士が経験から語る共通認識です。ある程度の売上が見込めるようになり、事務所を拡張したり、スタッフを雇用したりといった段階になって、初めてリース契約を視野に入れるのが賢明な判断と言えます。
賢い初期投資としてのプリンター選択肢
開業期においてリース契約が推奨できない最大の理由が固定費のリスクであるならば、どのような選択肢があるのでしょうか。初期費用を抑えつつ、必要な機能を確保するための具体的な方法を解説します。
選択肢1:手頃な価格のプリンターを購入する
開業行政書士に圧倒的にオススメなのは、必要な機能を備えたプリンターを「購入」することです。購入であれば、初期投資は必要ですが、その後はインク代や用紙代といった「変動費」が主となり、毎月決まった「固定費」が発生することはありません。これにより、使用頻度が低い開業初期でも、無駄なコストを抑えることができます。
ここで重要なのは、「高価な最新機種である必要はない」ということです。行政書士業務に必要な印刷品質や機能(後述します)を満たしていれば、数万円程度の手頃な価格帯のモデルで十分に事足ります。もちろん、購入後に故障するリスクはゼロではありませんが、開業初期の固定費リスクと比較すれば、はるかに健全な選択と言えます。
選択肢2:コンビニ印刷を積極的に活用する
「いや、開業資金を極限まで抑えたい」「そもそも印刷頻度が本当に少ないかもしれない」という方には、「プリンターを購入せず、コンビニのプリントサービスを活用する」という方法も有効な選択肢となります。
コンビニのマルチコピー機は高性能であり、家庭用の安価なプリンターよりも高品質で鮮明な印刷が可能です。また、24時間いつでも利用できる利便性や、外出先で急に書類が必要になった際に対応できる柔軟性も魅力です。
コンビニ印刷の主な利用方法は以下の2つです。
- USBメモリに保存して印刷する方法:最も一般的で確実な方法です。事前にパソコンで作成したデータをPDF形式でUSBメモリに保存しておけば、ほとんどのコンビニで印刷できます。
- スマホやPCからデータを送信して印刷する方法:各コンビニチェーンが提供するプリント用アプリやサービスを利用します。データをアップロードし、店舗のマルチコピー機で受付番号を入力して印刷します。手軽ですが、店舗のWi-Fi環境やアプリの対応状況に左右されることがあります。
【コンビニ印刷活用のポイント】
印刷したいデータは、トラブルを防ぐためにも必ずPDF形式に変換しておきましょう。WordやExcelなどのオフィス形式のデータは、対応していない場合やレイアウトが崩れる場合があります。
USBメモリとスマホからの送信、両方の方法を把握しておくと、状況に応じて使い分けができて便利です。
デメリットとしては、印刷が必要な度にコンビニまで足を運ぶ手間が発生することです。自宅兼事務所などで、印刷頻度がそれなりにある場合は、この手間が大きな負担となる可能性があります。
開業初期はコンビニ印刷で凌ぎつつ、事業が軌道に乗り、印刷頻度が増えてきた段階で改めてプリンター購入を検討する、というステップを踏むのも賢い戦略と言えます。
行政書士業務に必要なプリンターの機能
プリンターを購入する場合、どのような機能が必要になるのでしょうか。行政書士業務の特性を踏まえ、優先すべき機能や検討すべきポイントを解説します。
最優先事項:FAX機能の有無
現代はメールでのやり取りが主流ですが、行政書士業務においては、未だにFAXの使用が不可欠な場面が多々あります。
例えば、官公署への申請書類について、軽微な修正指示を受けた際にFAXで訂正箇所を送信して確認を取ったり、一部の協力業者や金融機関との間で書類のやり取りにFAXが使われたりすることがあります。「メールで送ればいいのに」と思う場面もあるかもしれませんが、FAXでのやり取りに慣れている相手方も少なくありません。
正直なところ、可能な限りメールで完結したいと考える行政書士が多いのも事実ですが、現実としてFAXを使用する機会はゼロではありません。申請業務を円滑に進める上でも、FAX送受信機能は最優先で検討すべき機能と言えます。
コンビニでもFAXの送受信は可能ですが、毎回コンビニに行く手間がかかる上、送受信の履歴管理や、相手方によってはコンビニからのFAXを敬遠する場合もあるため、事務所で対応できる環境がある方が圧倒的にスムーズです。コピー、スキャン機能も備わった「複合機」であれば、これ一台で様々な業務に対応できるため、非常に実用的です。
インクジェットか?レーザーか?インクコスト問題
プリンターを運用する上で、本体価格以上に気になるのが「インク(またはトナー)代」です。特に印刷頻度が高い場合は、ランニングコストとして大きな比重を占めます。プリンターの印刷方式には大きく分けてインクジェット方式とレーザー方式があります。
- インクジェットプリンター:液体のインクを紙に吹き付けて印刷します。本体価格が比較的安価なモデルが多いですが、インクの消費が早い傾向があります。これは、インクを噴射するノズルが詰まらないように、定期的に少量ずつインクを使ってクリーニングを行う必要があるためです。カラー印刷の発色が良く、写真印刷などにも向いています。
- レーザープリンター:トナー(粉状のインク)を静電気で紙に転写し、熱で定着させて印刷します。本体価格はインクジェットに比べて高価な傾向がありますが、トナーの持ちが良く、大量印刷に向いています。普通紙への文字印刷が鮮明で、印刷速度も速いのが特徴です。
行政書士業務では、カラー写真の印刷よりも、文字中心の書類印刷がメインとなることが多いでしょう。この点では、文字の鮮明さやランニングコストの面でレーザープリンターに分があると言えます。ただし、レーザープリンターも大量に印刷すればトナーは減りますし、本体価格やトナー代自体が高めという側面もあります。
インクジェットプリンターを使用する場合、インク代を節約するために、普段の確認用印刷などは「標準画質」で済ませ、官公署への提出書類やお客様にお渡しする重要な書類のみ「高画質」や「最高品質」設定で印刷するなど、賢く使い分けることをお勧めします。
A3印刷の必要性とその判断基準
行政書士業務で主に使用する紙のサイズはA4ですが、一部の業務においてはA3サイズの印刷が必要となることがあります。
【A3用紙を使用する業務例】
公図の写しを使用して事前相談を行う場合(農地転用など): 法務局で取得する公図はA3サイズであることが一般的です。申請書に添付する公図は法務局で取得した原本を使用しますが、事前の検討やお客様への説明のためにコピーが必要になることがあります。
建物の平面図や土地の図面などを申請書に添付する場合:
- 飲食業許可申請や風営法許可申請における店舗の平面図
- 旅館業許可申請における施設の平面図
- ペットショップ登録申請における施設の平面図
- 農地転用申請、開発許可申請、占用許可申請、河川法申請などにおける土地利用計画図、測量図、配置図など
これらの図面はA3サイズで作成・提出が求められることが多く、A3印刷ができると便利です。
- 公庫の融資申請時の創業計画書: 書式によってはA3サイズで提出する場合があります(A4を2枚で代用可能な場合もあります)。
これらの業務(特に建物や土地、許認可申請など、図面が必要となる可能性のある分野)を専門とする予定があるかどうかが、A3印刷機能が必要かどうかの判断基準となります。
もし、これらの分野を全く取り扱わない予定であれば、A4サイズのみ印刷可能なプリンターで十分です。
また、A3印刷が必要な頻度が非常に少ないのであれば、A3サイズの印刷が必要な時だけコンビニのプリントサービスを利用するという方法も現実的です。A3対応の複合機は、A4対応のモデルよりも本体価格が高くなる傾向があるため、ご自身の専門分野や業務計画に合わせて慎重に検討しましょう。
オススメのプリンタ
インクジェットのオススメプリンタ
以下、amazon及び楽天の商品ページのリンクです。
Amazonや楽天など、ネット購入がオススメです。
プリンターは結構重いので、自宅からネット購入できて、自宅や事務所まで運んでもらえます。
- ブラザー
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A3印刷が可能なインクジェットプリンター
2段トレイのバージョンもある
複合機としてFAXも利用可能
ADF(自動原稿送り装置)が付いているため、大量のコピーやスキャンが楽です。ADFは意外と重宝します。
申請書などを印刷するときは、最高品質で印刷することで、キレイな書類が印刷できます。
- キャノン
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ギガタンク搭載のインクジェットプリンタ
インクを注入するタイプのため、比較的インク代が安いのが特徴。
FAX機能付きの別バージョンもあり。
- エプソン
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A3印刷まで可能なインクジェットプリンタ
FAX機能なしバージョンや、用紙トレイ2段バージョン、インク代が節約できるタンク式もある。
レーザーのオススメプリンタ
インクジェットとの違い
- 高い(本体もトナーも)
- 速い
- キレイ
- ブラザー
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A4まで印刷可能なレーザープリンター
- キャノン
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A4モノクロ印刷のみ
A4で白黒印刷しか使わないのであれば、このくらいで十分です。
プリンターのインクやトナー
プリンタの一番のネックがインク(トナー)代です。
インクには純正品と互換品がありますが、純正品を使うことをオススメします。
互換品は純正品に比べてかなり安いので、互換品が使えれば互換品を使いたいところです。
インク、トナーともに互換品を試してみましたが、最終的に純正品を使っています。
互換品を使うと、インクかすれや印刷が薄くなってしまうなど問題が起きてしまいます。
しかもプリンター自体が故障する原因ともなります。
結局、安物買いの銭失いになりがちなのがプリンタのインクです。
参考にインクとトナーを紹介<PR>
ブラザー純正インク(上記A3対応のプリンター用)
キャノンレーザープリンタ用トナー(上記キャノンのモノクロプリンタ用)
筆者が使っているプリンター
筆者は現在もレーザープリンタとインクジェットプリンタの両方を使用しています。
- 写真などのカラー印刷用+図面の出力用にA3対応のインクジェットプリンタを使用 (上記のブラザーA3対応のもの)
- モノクロ印刷で申請書や大量印刷する場合にレーザープリンタを使用 (上記のキャノンモノクロ)
初期費用をかけないように安めのものを調達したため、このような構成になっています。
プリンタについて同業の行政書士に聞いたとこ、複数のプリンタを組み合わせて使っているそうです。
実際に使用してみた感想はレーザーのほうが印刷がキレイだということです。
現状の構成で十分ですが、A3対応の安いレーザープリンタがあれば買い替えるかも知れません。
行政書士開業の際のプリンタ選びの参考になれば幸いです。
結論:開業行政書士のプリンター戦略まとめ
行政書士として独立開業するにあたり、プリンターは必須のツールですが、開業初期の厳しい経営状況を踏まえ、賢く選ぶことが重要です。
最も推奨されるプリンター戦略は、「リース契約は避け、必要最低限の機能を備えた手頃な価格の複合機(FAX機能付き)を購入する」ことです。これにより、毎月の固定費負担を抑え、資金繰りのリスクを軽減できます。
また、開業資金を極力抑えたい場合や、印刷頻度が非常に少ないと想定される場合は、「コンビニのプリントサービスを積極的に活用する」という選択肢も有効です。コンビニ印刷で凌ぎつつ、事業が軌道に乗ってからプリンター購入を検討するステップも現実的です。
プリンターの機能としては、メールが主流の時代でもFAX機能は最優先で必要となる場面が多いことを認識しておきましょう。印刷方式はインクジェットかレーザーかでランニングコストの傾向が異なりますので、想定される印刷頻度や重視する品質に合わせて検討が必要です。そして、A3印刷機能については、公図や図面を扱う業務を行う予定があるかどうかを基準に判断しましょう。これらの業務を行わない場合はA4サイズのみで十分です。
開業は資金がすべてではありませんが、資金が尽きれば事業は継続できません。プリンター選び一つにおいても、「規模は小さく、固定費をかけない」という個人事業主の鉄則を忘れずに、ご自身の状況に最適な選択をしてください。
この記事が、あなたの行政書士としての第一歩を踏み出す上で、少しでもお役に立てれば幸いです。
この記事で解説したポイント
- プリンターはなぜ行政書士に必須なのか?
- 開業期のプリンター選びで最も重要なこと:固定費を避ける
- 開業期の最大の敵:固定費
- リース契約の落とし穴
- 賢い初期投資としてのプリンター選択肢
- 選択肢1:手頃な価格のプリンターを購入する
- 選択肢2:コンビニ印刷を積極的に活用する
- 行政書士業務に必要なプリンターの機能
- 最優先事項:FAX機能の有無
- インクジェットか?レーザーか?インクコスト問題
- A3印刷の必要性とその判断基準
- オススメのプリンタ
- 筆者が使っているプリンター