行政書士として独立・開業した後、次のステップとしてセカンドライセンス取得を検討される方が増えています。
その中でも「建築士」は、許認可業務との親和性が高く、業務領域を広げる大きなチャンスとなります。
本記事では、建築士の基礎知識から、行政書士業務との具体的な連携ポイント、取得メリット・デメリットまでを詳しく解説します。
この記事を読むことで、建築士資格取得がもたらす可能性を明確にし、次のキャリアプランに役立つ情報を得られます。
建築士の基本的な定義・概要
建築士とは何か?
建築士は、建築物の設計・監理を行う国家資格です。1級建築士、2級建築士、木造建築士の3種類があり、それぞれ扱える建築物の規模や用途が異なります。
例えば、1級建築士は大規模なビルや集合住宅の設計・監理が可能で、2級建築士は比較的小規模な住宅や店舗などを対象とします。
木造建築士は、木造住宅に特化した業務ができる資格です。
主な業務:構造計算、建築確認申請、設計監理など
建築士の具体的な特徴・詳細情報
建築士の独占業務と設計監理業務
建築士の大きな特徴は「独占業務」があることです。
構造計算書の作成や建築確認申請書の提出は、建築士でなければ行えません。
また、設計した建築物が法令に適合しているかを監理し、完了検査をクリアするまで責任を持ちます。
- 構造計算書作成
- 建築確認申請書の作成・提出
- 設計図書の作成
- 現場監理・完了検査立ち会い
試験科目と学習ポイント
建築士試験は学科試験と設計製図試験に分かれます。
学科では建築法規、構造力学、施工管理など幅広い分野を学び、製図試験では実際の建築計画図や矩計図(かなばかりず)を作成します。
学習のコツは、過去問題を繰り返し解き、設計製図は手を動かして多くの練習を積むことです。
建築士資格が注目される背景・意義
なぜ行政書士と建築士の連携が注目されるのか?
行政書士の許認可業務では、建築に関する手続きが頻繁に発生します。
例えば、農地転用後の建物計画には設計図が必要であり、建築確認申請を行政書士が代行する際には建築士との連携が不可欠です。
建築士資格を持つことで、設計書の作成から申請書類の一貫対応が可能になり、ワンストップサービスを提供できます。
社会的ニーズと市場動向
近年、地方創生プロジェクトやリノベーション需要の高まりにより、建築関連の許認可件数が増加しています。
また、住宅性能向上や耐震リフォームに関する手続きサポートを求めるニーズも高まっており、建築士資格者の需要が拡大しています。
2025年4月から木造戸建ての大規模リフォーム工事の確認申請が拡大され建築士の業務が増加
- 木造2階建て
- 木造平屋(延べ床面積200㎡超え)
上記建物について、壁、柱、梁、屋根、階段の一定の工事について、建築確認手続きの対象となりました。
なお、木造平屋(延べ床面積200㎡以下)は従来通りです。
行政書士業務との具体的な連携ポイント
許認可手続きにおける共同業務フロー
下記のような流れで、行政書士と建築士の協働がスムーズになります。
- 行政書士が顧客から依頼(例:農地転用許可)
- 建築士が設計図面・構造計算書を作成
- 行政書士が許認可申請書類を取りまとめ
- 行政書士が関係機関に申請・許可取得
- 建築士が現場監理・完了検査立ち会い
費用構成と報酬設定のポイント
共同業務では、設計報酬と申請報酬を明確に分ける必要があります。
設計報酬:建築士が設定(平米単価または一式)
申請報酬:行政書士が設定(許認可ごとに一式)
両者で報酬体系をすり合わせることで、顧客に安心感を与えられます。
連携事例・ケーススタディ
事例1:農地転用+住宅新築
ある顧客が農地転用後に住宅を建てたい場合、行政書士が転用許可申請書を作成し、建築士が住宅設計図を用意。
両者が連携することで、許可から着工までの期間を短縮できました。
事例2:リノベーション許可取得支援
調整区域内の建物リノベーションでは、建築士が耐震診断と改修設計を担当。
行政書士は都市計画法に基づく開発許可や各種申請を一括代行し、ワンストップでプロジェクトを成功に導きました。
セクション6:建築士資格取得のメリット・デメリット
メリット
- ワンストップサービス提供による顧客満足度向上
- 業務範囲拡大による売上増加
- 信頼性向上と競合との差別化
デメリット・注意点
- 学習・試験対策に要する時間とコスト
- 設計業務への対応体制構築が必要(ソフト・人員)
- 建築士は独占業務の責任範囲が広く、リスク管理が重要
- 受験をするためには実務経験が必要
結論・まとめ
行政書士として活躍された後、建築士資格を取得することで、許認可業務とのシナジー効果を最大化できます。
設計から申請、現場監理まで一貫したサービスを提供することで、顧客満足度と売上を同時に高められます。
学習の時間や体制構築は必要ですが、得られるリターンは大きいと言えるでしょう。
- 建築士とは何か?
- 建築士の独占業務と設計監理業務
- なぜ行政書士と建築士の連携が注目されるのか?
- 許認可手続きにおける共同業務フロー
- 連携事例・ケーススタディ
- 建築士資格取得のメリット・デメリット
- 結論・まとめ